まちづくりのひろば

子どもたちの未来のために

循環するまちづくり 〜北村隆幸さん

11月11日(土)富田地区市民センターで、賑わいのある文化の香るまちづくり委員会主催の第二回東海道セミナー「伝統文化に根ざしたまちづくり」〜地域の資源が循環するまちづくりを〜が行われました。講師はせき・まちづくりNPOぶうめらん代表理事の北村隆幸さんです。

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北村さんは地元の岐阜県関市でまちづくりのNPOを立ち上げられ、フリーペーパー「ぶうめらん」を基軸に様々な協働事業を手掛けられています。今回は富田地区と同様に伝統文化豊かな「刃物のまち・関市」での事例を中心に「循環するまちづくり」について講演をしていただきました。

 

講演の概要

・まちづくりにおいて大切なのは、そもそも「まちづくりしてどうなりたいか?」という目的と現状とのギャップ(課題)を明確化することにより、事業が生まれる。

・資源がないことを嘆くより、今あるものを探すこと。まちが賑わいを取り戻せば来訪者も増える。

・私のまちづくりの定義→「地域の富を稼いで、その利益の循環をつくること」

・循環の例:広島県庄原市地域通貨・移動販売車を用いた循環)

 

お寺を活かしたまちづくり(お寺と協働)

お寺の線をつなぎ、面としてのまちづくりの広がりへ。お寺を様々な市民が活用して、賑わいが生まれ、それが企業や商店街へ広がり、町の活力に。

多世代憩いの広場てらっこ

・関善光寺天台宗 宗休寺)にて、週2回(月・金)10時〜15時、ばぁば(シルバー人材センターより)とママがスタッフで子育て支援。常時3人体制。

「イベントではなく、常態化してこそまちづくり」〜紙芝居、住職講和、ヨガ教室、ママのためのデジカメ講座、映画上映会、ハロウィンパーティー、もちつき大会など。

善光寺茶屋てらっこ

・30年使われなかった茶店を“てらっこの賞金50万円”で復活させる。

・キッズカフェ、ばぁばランチ、親子セット。

広がるてらっこ

・上之保地域、武芸川地域にも拡大、各地区の地域委員会と共催。しかし善光寺てらっこは檀家団体との関係や補助金だのみの運営で行き詰まり、現在休止中。

お寺をつなぎ、まちづくり

関まちなか寄席 〜落語が大好きなお蕎麦屋さんが発起人。関の寺町にある関善光寺・広福寺・千手院を中心に開催され、有名な落語家出演し、いつも満席。

関のまちんなか御朱印七寺社巡り 〜「飛騨三寺めぐり」を参考に、御朱印帳づくりイベント。

各お寺が同時多発的に

 ・千手院座禅会

・広福寺〜ひとり親世帯対象の無償学習塾

お寺から企業・商店街への広がり

 ・フラワーバンク

・高校生×関牛乳〜「みそラテ」試作販売会

・ぜんこっじ散歩 善光寺界隈のお食事処などをマップに落とす

・関まちなか寄席・落語倶楽部〜アマチュア落語クラブを結成、商店を借り興行。

 

歴史的建物の通りと地域資源を活かしたまちづくり

石川県七尾市の事例から

・一本杉通り商店街は登録文化財を含む寄棟造の長屋が立ち並ぶ、50軒あまりの商店街であるが、歴史的建物などの資源を活かしきれておらず、和倉温泉からの観光客の足を向けることが出来なかった。そこで五人の仲良し女将さんが「花嫁のれん展」を発案、今年で14回目となる。毎年100枚以上が展示され、10万人以上が訪れるようになった。

・「花嫁のれん」とはお嫁入りの時に、嫁ぎ先の仏間にかかるのれんを花嫁さんがくぐる、地域に伝わる風習。婚礼の後、のれんは出番がなく“箪笥の肥やし”になっていた。

花嫁のれん展は毎年「昭和の日」から「母の日」まで(平成29年は4月29日(土)から5月14日(日)まで)各店に展示される。“語り部処のふれあい観光”も当初の13軒から67軒に増加。

・成功の要因は地元の人が企画運営し、後追いで行政、観光事業者が入り発展したこと。地元だからこそ「本物」の資源を活用でき、地域にお金が循環する観光が実現できた。

・類似の事例として「犬山城下町おひなさまめぐり」、「城下町村上 町屋の人形さま巡り」(新潟県村上市)、「いわむら城下町のひなまつり」(岐阜県恵那市)など。

 

高校生が地元に戻るために

関を出て行った20代、30代の若者が関に戻って住み続けられる地域を目指して、高校生フリーマガジンの発行(高校生と協働してフリーマガジンを製作、関・美濃の高校生全員に配布)、高校生インターシップの開催(高校生と関の企業が出会う場を創出)を事業化。

企業と連携して地域にお金が回る

 三輪塗装「富岡犯罪ゼロプロジェクト」〜富岡自主防犯パトの会が青パトの維持費用の捻出に困っていたところ、三輪塗装が活動協力に名乗り。三輪塗装からパトの会へ資金提供(年間12)と、人材提供(社員がパトロールに加わる)を行い、パトの会は、輪塗装への広報協力(トロールする車に広告掲載等)を行う。

「せきの未来・社会貢献プロジェクト(みらプロ)」(関市事業)

社会貢献活動を通して企業の魅力を高め、広く市民に知っていただくことで企業のブランド力と売上アップにつなげることが目的。現在までに3つのコラボ事業が実現。

コラボ①:緑と花の坂井×NPO法人 子援隊

無償で提供する「花」を使って、ひとり親の子どもたちがラッピングした花をお母さんにプレゼント

コラボ②:平田建設株式会社×駄菓子屋カフェCHABU

子どもたちを対象にした「お金に関する教育」に自社の会議室を提供

コラボ③:奥長良川名水株式会社×関市PTA連合会

 お水の売上の一部を、児童生徒の楽しい学校生活のために活動する関市PTA連合会に寄付
まちづくり協議会が中心となって観光事業(中津川市苗木まちづくり協議会)
苗木まちづくり協議会産業観光部会にて、まちづくり協議会として観光事業を検討。苗木城を活かした地域にお金が落ちる観光づくりを目指している。
 
 
セミナー後半は「地元(富田)の課題」について話し合いました。先ず隣同士で自分の考えている課題をシュア。その後、出していただいた課題の中から、いくつかについて参加者及び講師から意見をいただきました。

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課題:いかるが説教場・講の活性化

・地域内で回すのは難しい →外からの参加型にできないか

・場所貸しのハードルを下げる(手続き・利用料金など)

課題:古民家の古文書・絵画・民俗資料の保存・活用

・古い家のマップを作る。

・写真・資料集として残す(正泉寺現住職は古文書研究者)。

・知ってもらうことが大切。文化祭で歴史コーナーを設ける。

・多治見市のまちづくり会社では家守事業として、古民家を3万円程度で貸し出し活用している。

課題:地域活動に関心を持つ人が少ない

・子どもの教育が大事。小学生に富田の将来について絵を描いてもらいたい。

・自治会長の任期が短すぎる、せめて4年サイクルでないと。行政が自治会に何もかも押し付けすぎだからなり手がないという意見もある。

・地区社協は忙しく、人材育成をする暇もない。 →イベント・行事の棚卸しをしてみてはどうか。

 

 セミナー前半は、北村さんの「地域資源を循環させる」事業・活動の一端を見せていただきました。また後半は富田の課題について有益な話し合いができました。「地域の富を稼いで、その利益の循環をつくる」視点、コラボ・協働が今後のまちづくりの方向です。今後はそれらを意識し、話合い重ね、行動につなげていかなければなりません。
 
(おわり)