まちづくりのひろば

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住民主体のまちづくり〜山中光茂氏の手法

容姿も経歴も政治手法も特異な、松阪市長の山中光茂氏の「住民主体のまちづくり」を紹介します。

巻き込み型リーダーの改革 独裁型では変わらない!

巻き込み型リーダーの改革 独裁型では変わらない!

 

目次

第一章 自分の声より市民の声

第二章 反市長派も味方に

第三章 民間と明るく癒着

第四章 歌舞伎町とアフリカの教え

第五章 物申す現場が国を変える!

 山中氏は歌舞伎町でホステスの腕利きスカウト、医師としてアフリカでの医療支援を経験するなど異色の経歴、本人は自ら元「自殺志願者」で「偽善者」と称しています。

 

彼の手法が従来のものと違うのは“トップダウンでは世の中は変わらない”、目指すのは“市民と職員が一体となって「役割と責任」を果たしていくまちづくり”であり、それを実現させるための二つの政策決定手法を導入することでした。

 

一つは、市政全般に関わる重要案件については、政策を決定する前に必ずワークショップや意見聴取会を開催する。〜「シンポジウム・システム」

もう一つは、地域におけるまちづくりを実現するための「住民協議会」を小学校区単位を基軸に市内全域に配置すること。〜“住民協議会は個々の市民や各種団体が集まって話し合いながら、地域づくりに対してこれまで以上に「役割と責任」を果たしてもらう仕掛け”

 

「シンポジウム・システム」は行政で結論を出す前にいくつかのシミュレーションを市民に提示して、多種多様な議論を重ねてもらい、こうした場で出た意見を基に、市長や市職員が政策をまとめていくものです。このシステムは時間をかけて対話することにより多様な価値観や障壁などを住民側も認識でき、その上で責任ある市政の選択に関わることができるとのことです。

「住民協議会」は地域の自治会や消防団、民生委員、各種ボランティア団体などを中心に自主的に地域づくりを進めていくために構成する組織。協議会への支援は地域の実情に合わせて使える包括的な交付金。金額は人口や面積割りではなく、地域間で「政策コンペ」を行い、互いに政策を競い合って優れた提案をした地域に応分の交付金を渡すシステムだそうです。

 

市役所では地域に関わる職員を三倍にし、市長自らは3年で100回以上各地域と話し合いの場をもったそうです。献身的に地域と直接向かい合う市長は、真に住民主体のまちづくり、言わば「直接民主制」を実現しているのだと思います。

でも置き去りにされた議会の反発は容易に想像できます。最近、議会による議案否決をめぐって市民に市長の信任を問うための再選挙を行うという報道がありました。

 

住民主体のまちづくりのキーワードは「役割と責任」です。行政だけでなく住民も「役割と責任」を果たすこと、行政はそれが可能となる仕組みを作り、粘りづよく運営することが求められています。

 

(おわり)