まちづくりのひろば

子どもたちの未来のために

甲賀市生ごみ堆肥化循環システム

ダンボーコンポストは自家で堆肥化を完了させる“究極にエコな”生ごみ堆肥化システムですが、

①生ごみを好気性バクテリアが十分に分解出来る大きさまで細かくしてやらなくてはいけないこと。

②毎日かき混ぜ、穴を掘って生ごみを入れなければならないので、生ごみの逐次投入が非常に面倒。

など、手間ひまがかかり一般に普及させるのは難しいと思われます。

 

また生ごみの一括回収・堆肥化の例は、先のブログ(「TRASHEDーゴミ地球の代償ー」 - まちづくりのひろば)のビデオの中で、リサイクル先進都市サンフランシスコは生ごみをそのまま容器に投入し業者が回収していましたが、狭い日本の家屋では臭いの点で難しいと思います。

 

一般の方が参加しやすい生ごみ堆肥化システムはないかと探していたところ、滋賀県甲賀市がかなり普及しており、堆肥化を担当している(株)水口テクノスは見学者も受け入れているとのことなので休日を利用し、甲賀市を訪問しました。

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先ず甲賀市役所の生活環境課で概要の説明を受けました。

甲賀市は平成16年に旧甲賀郡の5町(水口町、土山町甲賀町甲南町信楽町)が合併した人口9万3千人の市。生ごみ堆肥化システムは水口町で十数年前から行われており、合併後、市内各地域に普及し、現在8千世帯が参加しているとのこと。

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家庭では20ℓ程度の密閉容器(模型写真を参照)を用意し、底に種堆肥を敷き、生ごみを入れる度に種堆肥でサンドイッチします。二次処理が前提なので、生ごみの大きさなどはあまり気にしなくて良いそうです。堆肥が生ごみの水分を吸収するので、臭いはわずか。(因にこの容器の中では生ごみの分解・堆肥化は起らないそうです。)

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参加者のいる自治会などの集積所にはこの回収容器が置かれており、週に2回、燃やすごみと同じ日に集積所に収集車が来て回収されます。収集日に直接この容器の中に生ごみを入れても可だそうです。

下の袋が種堆肥。週の初めの回収日に参加世帯分集積所に置かれます。種堆肥として使わず、家庭菜園への流用もOKです。

担当のTさんは堆肥化システムの普及により、市民のエコライフ推進への意識が高まったことが一番の成果だと熱く語られました。

(参考:生ごみ堆肥化事業/甲賀市

 

この後、甲賀市郊外の工業団地内にある(株)水口テクノスのプラントを訪問しました。水口テクノスは水口町の頃から堆肥化循環システムの中心的な役割を果たしてきました。現在、大津市もこのシステムを導入。大津市市内で堆肥化プラントを設け、約4千世帯が参加しています。

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事業登録の看板。他に自治体ごとに設置許可・業務許可が必要とのこと。

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このプラントでは甲賀市内8千世帯分の生ごみの他、スーパーなどから出た売れ残り野菜なども堆肥化しているそうです。

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 1次発酵処理施設。間口が狭く“うなぎの寝床”の様。10tの容量があり、このプラントにはこれが2つあります。堆肥化装置(直線スクープ式発酵装置)に直接、回収容器の中身を入れる。1日に2往復、撹拌装置が奥から手前、そしてまた奥へ移動し堆肥をかき混ぜ発酵を促進。乾燥した草・剪定枝や牛糞も投入し、また上部から水を噴射し水分調整をします。堆肥の温度は80度近くまで上昇。この工程は2週間くらいで完了します。

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二次発酵処理施設・ストックヤード。

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1次発酵の工程後こちらに移し、1週間ごとに撹拌し、約40日かけて処理するそうです。出来上がった堆肥は振るいにかけられた後、袋詰めされ、種堆肥として家庭へ配布されます。

(株)水口テクノスの生ごみ堆肥化事業は市からの業務委託金のみで行われているそうです。民間が堆肥化事業に加わることは全国的に見て珍しいそうで、普及のカギは「行政・市民・企業」の恊働にありそうです。

(参考:甲賀市水口町:水口テクノス リサイクルからエコロジーシステムまで、最新の技術で環境保全に取り組みます 生ゴミ循環エコロジーシステム

 

甲賀市のこの堆肥化事業には生ごみを焼却する場合と同様、回収コストがかかり、また堆肥化コストも付加されます。

(※初期投資費は2億5千万円〜三重の環境:資源循環と廃棄物/地域循環ネットワークモデル事業報告書より)

“リサイクルはコストがかかるもの”。あえて手間ひまと、多少のコストを惜しまずエコライフを推進することが、豊かな物質文明を享受した私たちの、未来の子どもたちに対するせめてもの“償い”だと思いました。

 

(おわり)