稲作と生物多様性
自分の家の近くは水田地帯なのですが、最近イタチやキツネをよく見ます。耕作放棄地が増えて草むらを寝床にしているものと思われますが、野生の動物が増えてうれしい気もします。
今、「田舎力」という本を読んでいます。地域活性化のヒントがたくさん詰った本なのですが、「耕さない」田んぼの話が面白かったので紹介します。
この本では「不耕起栽培」と「冬期湛水」という農法を導入した宮崎県田尻町と兵庫県豊岡市の事例を記しています。
・「不耕起栽培」は高齢化と人手不足の農家のために考えられた耕す作業を省く農法。
・従来の何度も耕すやり方は重労働。耕すことで雑草が出るから除草剤を使うことになる。耕さなければ雑草の出が少なくなり、除草剤を使わなくて済む。
・硬い地面に自分の力で根を伸ばす苗は力強く、多くの肥料を必要としない。
・農薬を減らした「耕さない田んぼ」にはタニシやドジョウ、トンボなど様々な生き物が現れた。
・さらに冬期にも水を張った(「冬期湛水」)ところ、水の中の生き物を目当てに渡り鳥も越冬にやってきた。「冬期湛水」は雑草を抑制する効果もある。
・農薬を使わない安全な米ということで消費者の高い評価を受け、売れ始めた。
・豊岡市では「コウノトリ育む農法」として、米のブランド化や子どもたちの環境学習にも活用している。
人の手をかけて、農薬などを使い、生育環境をコントロールしようとしてきたのが日本の近代農業でしたが、人間がある程度自然に委ねることにより、おいしいお米と自然の連鎖による生物の多様性が得られるという素晴らしい事例でした。
(おわり)