まちづくりのひろば

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ガス化溶融炉について

四日市市では新しいごみ処理施設にガス化溶融炉が採用されました(→以下の過去記事参照)。今回はこのガス化溶融炉とはどんなものか調べてみました。

ガス化溶融炉の原理は、「無酸素/不足下でゴミを~450℃で蒸し焼き状態にし、生じた可燃ガスで約1400℃にして完全燃焼させる」というもの。もっとも広く使われているストーカー炉などの焼却炉(850℃が上限)とは異なり、溶融炉は意図的に炉内を1300℃以上にしてゴミを溶かします。(参考:21世紀のライフスタイル〈1〉ゴミ・リサイクル・ダイオキシン (のぎへんのほん)

 

ごみ処理施設はハイテクでブラックボックス化しており、外部のものにはわかりにくくなっていますが、ジャーナリストの立場で詳述された以下の著作が参考になりました。

検証・ガス化溶融炉―ダイオキシン対策の切札か

検証・ガス化溶融炉―ダイオキシン対策の切札か

 

近年のガス化溶融炉建設ブームは1997年の厚生省通達「ごみ処理の広域化計画について」を契機としています。(参照→法令・告示・通達>ごみ処理の広域化計画について

この中の

ダイオキシン削減対策

・焼却灰の溶融固化

・ごみ発電などの余熱利用⇒焼却能力300トン(一日当たり)以上

などの内容から、従来の焼却炉に灰溶融炉を追加する必要が生じてきました。そこで、ごみの投入からスラグ化までを一貫して行うガス化溶融炉が注目され、各メーカーが競って参入することとなりました。

 

ガス化溶融炉は理論的には比類のない技術ですが、実際は環境面で問題がたくさんあります。

ガス化溶融炉の問題点

○市民のリサイクル意識を減退させる

なんでも溶かしてしまうなら分別の必要性がないと考えるのは当然です。パックに入ったコンビニ弁当から大型家電までそのまま投入されるかもしれません。分別がなくなれば、プラスチックごみを減らそうという意識は希薄になります。

○行政にごみを減らす原理が働かない

行政がごみ発電を不足なく行うために“ごみをかき集める”という状況に陥るのは目に見えています。わずかな電力を得るためにごみを燃やし、環境を悪化させるのは本末転倒です。

○ごみ置き場の問題

分別されないためゴミは多量となり、ゴミ置きスペースの拡大が必要となります。またゴミに有害なものが混入していてもわかりません。

○有害物質の処理とバグフィルター故障時の対応

ガス化溶融炉でも飛灰として高濃度の有害物質が出ます(ごみ総量の3%程度)。処理方法として最も確実な“山元還元(鉛や銅などの重金属を析出させる)”は極めて高価なため、セメント固化や酸性雨などで溶出の危険性のあるキレート処理に止まると思われます。

また事故や故障でダイオキシン以外の多環芳香族炭化水素(PAHs)やニトロ-PAHs、有害金属が拡散しても環境基準がないため、前兆を見つけて被害を防ぐということは難しいと思います。

 

ガス化溶融炉は製鉄の溶鉱炉技術を応用していますが、選別された材料を溶かす溶鉱炉と違い、ガス化溶融炉は何が入ってくるかもわからないので温度や酸素供給の管理にとても熟練を要するそうです。

まだ歴史の浅い技術なので、不測の事故なども想定されます。技術偏重のガス化溶融炉には危うさを感じます。

 

(おわり)